2022年6月2日のWBS(ワールドビジネスサテライト)で、Spiber(スパイバー)という会社の構造たんぱく質繊維「ブリュード・プロテイン」を特集していた。
ブリュード・プロテインというのは、平たくいうと「人工的なクモの糸」
最高の汎用性
従来の石油を原料とする合成繊維とは異なり、多種多様なタンパク質を発酵させて素材を生産する技術で、組み合わせよって異なる特性や形態の材料を設計できるところが最大の特徴。
先日のWBSではナイロン、デニム、革、ファー等、全く異なる硬さや手触りを再現していた。
一つの釜から異なる素材を作り出す、魔術か錬金術のような技術。
脱アニマル、脱石油素材の推進、輸送における軽量化にも貢献する可能性を秘めているとのこと。。
さらに、エネルギー消費量も少なく、環境負荷も小さいと至れり尽くせり。
その弱点
魔法の素材に見えるブリュード・プロテインだけど、番組内で弱点にも触れていた。
それは水に触れるとめっちゃ収縮すること。
衣類に使用する場合、洗濯できないのは致命的。
素材の発表当時は後々改善できると踏んでいたらしいけど、水にぬれた際の寸法安定性を品質基準内に抑えられなかったことで製品化が思うように進まなかったらしい。
WBS番組内でもどの程度克服できているかは詳しく報じられていなかった。
ただ、過去の失敗というニュアンスで語られていたので、現在はある程度改善されているかもしれない。
更なる革新への糸口
タイムリーなことに2022年6月4日にNHK BSで放送された「パリ・オートクチュール~伝統と革新~」という番組を見ていたら、ブリュード・プロテインの名前が出てきた。
難しい立体形状を繊維で構成再現する過程で、ブリュード・プロテインを3Dプリンターで出力形成していた。
平面で出力された素材をお湯に浸し、蛇腹状に収縮させて立体形状を構成させるというものだった。
水に触れると収縮する弱点を逆手に取って(?)蛇腹状にするということは、下記のどちらか、または両方で蛇腹の具合をコントロールしたんだと思う。
- 凸凹をつけた平面を出力し、蛇腹の具合をコントロールした
- 各部分ごとに性質(収縮性)の違う素材で平面を出力し、蛇腹の具合をコントロールした
番組内で詳しい説明は無かったけど、もし後者だとすると異なる性質の素材をシームレスに連結させることができるということ。さらに繊維の可能性が広がる!!
子供の頃に見た化学本に「地球と宇宙をつなぐ起動エレベータを作るには”蜘蛛の糸のように細く柔軟、かつ鋼の強度を持った繊維束のワイヤロープ”が必要」と書かれていた。まさに夢の素材。
変幻自在の蜘蛛の糸から始まって、面になり、さらに三次元の構造物にも使用できるような素材が登場する未来なら、起動エレベータで宇宙へ上がることも夢ではないかもしれない…わくわく。
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